信用収縮下での銀行業界再編の動きがヨーロッパにて加速している。まず手始めにスペインのサンタンデール銀行が英国のアライアンス&レスターの買収にかかっている。サンタンデール銀行は数年前に同じく英国のアビーナショナルを買収している。
しかしながら、メリルリンチによるといくつかの金融機関は買い手を捜しているものの、多くは静観する立場をとっている。しかし信用収縮の拡大がさらに広がれば、金融機関の身売りは倍増するであろうと述べている。
英国の金融監督庁は金融機関のM&Aにを積極的に進めている様子であり、金融消費者団体の言葉を引用して、金融機関は自らのビジネスモデルを再考し現在の流動的な状況に即応できるようにしなければならないという声明を出している。別の言葉いうならば、M&Aを積極的に進め自己資本の増強を図れということだろう。
しかし現実としてはM&Aのを行う際の買い手が少ないのが現状である。少なくとも各銀行が抱えている証券の中身が明確になり、金融機関の株価が回復するまでは各投資家としても静観する構えのようである。
英国中央銀行は財界から金利の引き下げを行わないようにとの要望を受けているわけだが、英国の経済状況は確実に悪化しているとの報告が各エコノミストからあがってきているわけで、実際のところは英国中央銀行がどう動くかわからない。
財界の金利を下げるなという要望も、来月のさらに経済状況が悪くなることを見越し、それにあわせて下げてくれという要望なのだが消費者物価は上昇しそれとにあわせて小売店の売り上げも落ちているということで実際どのような手を打っていいの分からないのではないだろうか。
ヨーロッパ中央銀行は経済成長よりもインフレ抑止に重点を置いて先週金利を4.25%に引き上げている。これは7年ぶりの高い利率であるがそれと同時にユーロ圏内の経済状況は確実に悪化しており、サービスセクターでとくにその悪化状況が厳しくなっている。
英国でも小売およびサービス業界の業績悪化は顕著であり特に不動産関係では、住宅価格の下落により、不動産取引が冷え込むことによって今年中に不動産屋の五件に一軒は倒産するであろうと言われている。
ここにきて銀行が及びファンド会社が行ってきた金融搾取システムのツケが回ってきているようだが、一般家庭では上がりすぎた住宅価格の月々のローンを払うためにクレジットカードを使うなど一般庶民が長期借金地獄に陥っている。英国のクレジットカードは日本の物とは違い、次の月または何ヶ月後かに完済しなければいけないというものではなく、毎月ミニマムの支払いさえしていれば借金を完済する必要はない。たとえば年利20%くらいで5千ポンドを借りると、月々100ポンドの支払いで、完済に100年以上かかるというような仕組みになっておりそのために多くの家庭が長期的な借金地獄に落ちいっている。それに加えて、光熱費は100%アップ、ガソリンは29%アップなど大変な状況になっている。
インフレは現在どこの国でも起きていることであるが、英国の場合は日本と違って貯蓄をほとんどしていない、またはできない家庭が多くそのためこれらの人々が借金を返せなくなった場合どのように経済に影響を与えるのかが不確定要因になっている。
The Times 6月30日付けの記事より
信用収縮によって銀行業界は厳しい状況に立たされているわけだが、それにまた厳しい要素が加わるかも知れない。
英国政府は、昨年の9月に起きたノーザンロック倒産の危機を教訓として、預金者を守るための新しい危機管理体制つくりあげようとしている。この危機管理体制には、どの時点で破産しそうな銀行の経営権を政府が掌握し、破産を食い止めるかなどのいくつかのポイントがあるが、銀行が恐れているのは預金者の損害保障に用いられる各銀行の負担金をどの時点で納めるかということである。
現在各銀行は信用収縮により支出はなるべく避けたいところでありまた、金融危機に対しても、危機が起きた時点で支出を行うほうが現在の懐状態が厳しい銀行にとっては支出を先延ばしすることが可能なわけだ。
この体制が整うことで銀行危機の際の預金補償額は、現在の3万5千ポンドから5万ポンドまたはそれ以上へと引き上げられることになるわけだが、その分をカバーするための銀行支出いくらになるのか明示されていない。
アメリカ政府が現在貯めてある補償金の総額は5百億ドルほどであるがこの金額では英国の預金補償に必要な10兆ポンドにとても及ばない。
さらにすでに国営化されたノーザンロックも保証金の一部を負担するのかどうかということも焦点となっている。もしノーザンロックが負担しないのならば政府は銀行業界に対して不公平だという意見を抑えることができず、新たな政府批判の火種を抱え込むことになるであろう。
現内閣はこの補償金制度のほかにも、競争力、株主割当増資、保険など各分野での見直しを行っているが、銀行業界からはこれらの改革は競争力を弱めるものとして批判の声が上がっている。
12日に行われたアイルランドの国民投票で、リスボン条約受け入れは50%対40%で否決されたわけだが、今後このリスボン条約をどのように進めていくかをめぐってEU各国のリーダーは頭を痛めている。
EU内では条文を変えずに特別な例外をアイルランドに当てはめて、もう一度国民投票により条約を認めさせようと言う案もありどのように実際動くかわからない。
そのほかのEU国内においても、自主権、税額の設定、安全保障については独自の判断を確保したいという考えがあるが、これらの部分を改正するとなると膨大な条文の書きなおしを迫られ、またそれを承認するしなければならく失敗する確率が高いためどこもやりたがらないのが現状である。
今週末にはEUの首脳が集まり、リスボン条約について協議を行うがそこでのアイルランド首相のリスボン条約否決に対する見解によってはまたいくつか違った展開が様相される。アイルランド首相が解決策をEUに求めればEUは影響力を保つことができるが、一方的に拒否するようだとEUは違う選択肢を取らねばならなくなる。
それはすでに条約が承認されている国だけでリスボン条約を行使するということになるかも知れない。ニース条約によると、EU内8カ国がひとつの条約に対して共同行使を行えば、それを独自に運用できるとされている。
現時点でアイルランドには自主権や税額などにおいては、条約の条文を変えることなく、アイルランドは堅持することができるという妥協案がEUから提示されている。アイルランドの投票結果を受けて、フランスで独自に進めようとしていた税率をそのほかのEU諸国とあわせる動きも停止されている。
今後の協議の進み具合にもよるが、どのように決着を図っていくのか興味深いところである。
本日6月12日アイルランド共和国において、リスボン条約の受け入れるかどうかの国民投票が行われる。
リスボン条約とは今までの全EU参加国の合意が条件だったEU議会の審議の行い方を簡素化し、多数決による合意の仕方を取るなどの内容を含んだものである。簡単に言えば、EU各国がヨーロッパ連邦の一国となるよう進める条約ということらしい。この条約に関してアイルランド国民は、賛否両論まったくの五分に分かれているということである。
政治政党各党、経済界、労働団体、農業団体、メディアなどはこの条約に賛成しているが、保守団体などは安全保障や国内政治の独立性が失われることの懸念や、堕胎、ゲイ同士の結婚、売春、薬物の合法化など、アイルランドの価値観と合わない政策が導入される恐れがあるとして反対している。
EU内ではこのアイルランドの投票結果が注目されているわけだが、それは他の加盟国では行われない国民投票が、アイルランドにおいては条約受け入れが憲法改正にかかわることと重なり、EU国民の意思を代弁するものとして各国において位置付けられているからである。
別な言い方をすれば、アイルランドが受け入れればEUのいわゆる連邦化が加速されることとなるわけだが、否決されればリスボン条約に代わるものは提示されておらず。EUの行政機能を大幅に低下させるものとなる。
アイルランド国民がどの様な選択をするか興味深いところであるが、EUという比較的価値観の似通った民主主義国家群でさえ、自国と他国との共生というのがどれだけ困難であるかということが見て取ることができる。